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糖尿病になると認知症になりやすい

認知症

高齢化社会をむかえ、認知症の患者さんは増加しています。近年、認知症と糖尿病の関係が明らかとなってきています。糖尿病の合併症としては、眼の病気や、腎臓病は知られていますが、現在では、認知症も、これらと同じ合併症の1つと考えられています。

糖尿病になると認知症になりやすい

これまでの多くの調査で、糖尿病になると、認知症にかかりやすいことが、わかっています。

日本で行われた代表的な調査である久山町研究では、糖尿病の方は、糖尿病出ない方に比べて、認知症に1.7倍なりやすかったです。従来、糖尿病とはあまり関連がないと考えられていたアルツハイマー型認知症でも、糖尿病の方は、2倍かかりやすかったです。

出展 Glucose tolerance status and risk of dementia in the community: the Hisayama study. Neurology. 2011.

どうして糖尿病になると認知症になりやすいのでしょうか?

脳でのインスリンの働き

インスリンは、血糖値を下げるホルモンとして有名ですが、脳でも重要な働きをしています。

1つは、脳細胞にエネルギーを送るのを調整しています。脳細胞は、体の他の部分と違い、糖分だけをエネルギーとしています。この糖分を取り込むのに必要なのが、インスリンです。

もう1つは、「アミロイドβ」というタンパク質を分解して、脳細胞にたまるのを防ぐ働きがあります。「アミロイドβ」は、アルツハイマー病の原因となる物質で、アルツハイマー病の患者さんの脳には、アミロイドβがたまった「老人斑」というシミが、たくさんできています。

糖尿病になるとインスリンの働きが悪くなる

糖尿病になると、インスリンの働きがにぶくなり、これを「インスリン抵抗性」といいます。まず、インスリンの働きがにぶくなり、これが悪化すると血糖値が上がり、糖尿病へとなります。
このとき、からだのインスリンの分泌は増えますが、脳のインスリン量は、逆に低くなってしまいます。そのため、脳細胞がエネルギーを取り込みにくくなったり、アルツハイマー病の原因となるアミロイドβが蓄積していったりし、認知症になりやすくなると考えられます。

高血糖

高血糖が続くことによって、脳の血管に動脈硬化を引き起こし、脳が必要とする酸素や栄養が届かなくなります。このような状態は、アルツハイマー型認知症の原因となる「アミロイドβ」がたまりやすい状態でもあり、認知症になりやすくなります。
実際、血糖値の平均をあらわすHbA1cが上昇すると、計算能力が低下することが報告されています。

低血糖

脳は糖分をエネルギー源として利用しています。そのため、低血糖発作をおこすと、脳がダメージを受けると考えられます。実際、低血糖発作をおこしたことのある糖尿病の方は、そうでない方と比べて、認知症に約2倍なりやすいといわれています。

出展 Association between hypoglycemia and dementia in a biracial cohort of older adults with diabete smellitus. JAMA internal medicine. 2013.

認知症にならないためには

残念ながら、認知症を予防する直接的な治療法はありません。しかし、糖尿病や、血糖値が上がるのを防ぐことによって、認知症になりにくくなるすることができると考えられています。

定期的に健康診断を受けましょう

糖尿病は、初期の段階では症状に乏しく、知らないところで、病気が進行します。少なくとも、年に1回は、健康診断を受けて、糖尿病でないかどうかを調べましょう。

生活習慣を見直しましょう

糖尿病でなくても、その前段階である予備群(耐糖能障害)の方でも、認知症になりやすいことがわかっています。健康診断で、血糖値が正常でも、HbA1cが高い場合、食後の血糖値が高い耐糖能障害と考えられます。この場合、食べ過ぎや、運動不足など生活習慣を見直しましょう。

治療をうけましょう

糖尿病になっても、血糖値をコントロールすることで、認知症になりにくくなると言われています。
糖尿病と言われてもほったらかしにせず、治療を受けましょう。ただし、糖尿病の薬を飲むことで、低血糖が起こると逆効果です。最近は、医学が進歩し、低血糖を起こしにくく、安全性の高いくすりたくさんあります。