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睡眠時無呼吸症候群にかかると、脳梗塞にかかりやすい

脳梗塞

患者さんのご紹介

受診のきっかけ

60歳代半ばの男性の患者さんです。
高血圧脂質異常症(中性脂肪が高い)痛風があり、4種類のくすりをのんでいました。

日中の眠気の自覚はあまりありませんでしたが、奥様より、いびきが強く、睡眠時無呼吸症候群が心配であり、受診されました。この方のように、自覚症状はあまりないですが、家族に、いびきを指摘されて受診される方は多いです。

睡眠時無呼吸症候群の検査結果

呼吸は、最大76秒間も止まっていて、1分以上停止していることも、しばしばありました。呼吸が停止するのにあわせて、血液中の酸素飽和度(正常値 90%以上)は、84%まで低下していました。

そして、無呼吸低呼吸指数(AHI) 48.3 回/時でした。無呼吸低呼吸指数は、病気の診断の基準になっていて、正常は5 回/時未満です。30 回/時以上は重症ですので、この方は、重症の睡眠時無呼吸症候群と診断しました。

動脈硬化の検査結果

頸動脈が狭くなっています動脈硬化の状態を調べるため、頸部超音波検査を行いました。この検査は、首の血管を調べることで、動脈硬化の状態や脳へつながる血管の様子を調べることができます。
その結果、左側の内頚動脈に動脈硬化のかたまり(プラーク)があり、血管が、約1割まで狭くなっていました。

頸動脈が狭くなっていますあらためて、造影CT検査を行って、血管をうつしたところ、同様に狭くなっていることがわかります。この動脈は、脳へ血流を送る大変重要な血管です。この血管が詰まると、大きな脳梗塞になることが懸念されます。

動脈硬化の検査の詳しい情報
超音波検査(エコー検査) 動脈硬化の検査を行っています

治療

重症の睡眠時無呼吸症候群があるため、ただちに、持続陽圧呼吸療法(CPAP療法)を開始しました。

内頸動脈の動脈硬化をそのままにしておくと、脳梗塞になる可能性が高いです。一度できた動脈硬化が、薬の治療で良くなることはほとんどありませんので、動脈硬化を取り除く手術(内膜剥離術)を受けていただきました。その結果、動脈硬化は取り除かれ、脳梗塞の危険性は、低下しました。

もう一度、動脈硬化を起こさないためにも、血圧や中性脂肪を下げるくすりに加え、CPAP療法も継続しています。現在も、脳梗塞になることなく、通院されています。

睡眠時無呼吸症候群と脳梗塞

睡眠時無呼吸症候群は、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病になりやすくなります。特に、高血圧は、約半分の方があると言われています。そして、呼吸が止まり、血液中の酸素濃度が下がることで、血圧があがることがわかっています。この血圧の変化により、動脈硬化が進行しやすいと考えられています。
実際、睡眠時無呼吸症候群があると、心筋梗塞になる確率は約3倍、脳梗塞になる確率は約4倍といわれています。

出展 循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン

まとめ

動脈硬化がおこり、心筋梗塞や脳梗塞になる前に、治療をすることが大切です。